2022/07/09
オピニオン
安倍晋三元首相が奈良市での街頭演説中に銃撃され死去した事件は、彼の功績を改めて世界に知らしめる半面、安全と思われていた日本社会への信頼を大きく失墜させた。社会全体の危機管理について見直していくことが大切だ。
警察における警護、警備の在り方については、奈良県警察本部の鬼塚友章本部長が9日の記者会見で「問題があったことは否定できない」と認めている。この点は今後の検証結果を待つとして、一般市民としても、銃犯罪などが起きた際の行動を見直していく必要がある。
今回の事件では、SNSにより事件前後の状況が生々しく配信された。その映像を見る限り、1発目、そして2発目の銃声が鳴り響いてもなお、身を低くしたり、その場を急いで離れるなどの安全行動をとった人はほぼいないように見受けられる。テレビのインタビューでは多くの人が「銃声のような音がした」と発言していた。銃声をどこまで正確に認識していたかは定かでないが、銃声と思ったにも関わらず多くの市民が安全行動をとれなかった。現場にいた警官なら、少なくとも爆発音であることは認識できたはずだ。犯人が複数に及ぶ事態も想定しなくてはいけなかった。しかし、近くの市民に、身の安全確保を呼び掛ける様子はない。
米国土安全保障省の市民向けウェブサイト「Ready.gov」では、混雑した公共スペースでの攻撃に対しては、攻撃者からとにかく早く離れることを呼び掛けている。
奇しくも、新型コロナの感染拡大以降、鉄道での相次ぐ刺傷事件や、大阪北新地における放火事件など凄惨な事件が後を絶たない。こうした凶行な事件が起き得ることを頭の片隅にでも入れて、いざという時の対応を考えておくべきではないか。
オピニオンの他の記事
おすすめ記事
-
医療機能の維持を可能にした徹底的なハード対策非常時の代替ライフラインはチェック表で管理
元日の能登半島地震で激震に襲われた恵寿総合病院では、地震後も業務を止めることなく、充実した医療を提供し続けた。10年をかけて整備してきた、徹底的なハードとソフト対策のおかげだった。
2024/05/20
-
目まぐるしい状況変化 懸命に向き合った3カ月
市立輪島病院は能登半島地震で被災しながらも、懸命の処置により、運び込まれる負傷者や感染症に苦しむ患者の命をつなぎました。超急性期・急性期を乗り切ると医療需要は急減し、代わって介護機能の維持が深刻な課題に浮上。発災から介護医療院開設までの約4カ月、病院で何が起きたのかを同院事務部長の河﨑国幸氏に聞きました。
2024/05/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月14日配信アーカイブ】
【5月14日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:行動指針の意義
2024/05/14
-
-
情報セキュリティーは個人のリスク目線では通用しない
学生時代からパソコンを使いこなしてきた人が新入社員に多くいる昨今ですが、当然、個人と会社ではセキュリティーの重心が違います。また、人事異動で新たに着任した社員も、業務が変われば情報資産との関わり方が変わり、以前と同じ意識でのぞめばよいとは限りません。新年度にあたり、情報セキュリティーのルールは特に徹底したいところです。
2024/05/10
-
-
サイバーインシデント対応の基本知識と準備
本勉強会では、一般的な情報セキュリティインシデントとサイバーインシデントの違いや、その初動対応について事前に準備すべきことと合わせて、自社で手軽に訓練・演習を実施するためのポイントを解説します。2024年5月8日開催。
2024/05/09
-
-
炎上の原因はSNS上の振る舞いのみにあらず
新年度から仲間に加わった新入社員は「デジタルネイティブ」と呼ばれ、友人とSNS で交流するのがあたり前の世代です。が、学生時代と違い、社会人になれば取り巻く環境が変わり、自身の立場も変わる。うかつな投稿が「炎上」につながるケースは少なくありません。新人研修のテーマにSNSリスクを組み込むなどして教育を徹底したいところです。
2024/05/08
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方